コラム 第16回

2月第1週の教育ニュースでご紹介した、公立保育園での英語遊び開始や学習指導要領の改正に伴う英語の教科化などについて考えました。 ※ニュース要約はコチラからも参照できますが、本投稿の終わりにも載せています。

私は、英語の教育機会が早まるばかりの傾向について、不信感しか抱いていません。
それは、ここが日本だからです。そして、機会を早めるばかりで、こどもたちにとって英語が“あたりまえ”になっているわけではないからです。大人の側の自己満足だと思うのです。

まず、私の意見を支える「ここが日本だから」という点について。
前回のコラムでも書きましたが、当塾にはインターナショナルスクール生たちも通ってきてくれています。たまたまですが、在籍する生徒たちは皆、お母様が日本人、お父様が外国人の、世間で“ハーフ”と呼ばれる子たちです。
「片親が日本人だから、日本語が話せて当たり前」、「外国人だから、英語が話せて当たり前」などとレッテルが貼られがちですが、よほど意識高く学校と家の中とで使い分けなどしなければ、いやそれを試みていても、しっかりとバイリンガルに育てることは難しいものだというのが実際です。読み書きも、となれば尚更。
それゆえ、当塾にもそういった子たちが日本語能力の向上のため来てくれているのですが、授業は週に一度、1時間半です、もちろん日本語のみの環境で生活している子たちと比べれば学習ペースは緩やかで、何年か通っていただいてようやく、ある程度自由にものを言ったり書いたり読んだりできるようになります。
では、日本での英語教育に置き換えて考えるとどうでしょう。家に帰れば英語での会話機会があるという環境でもない、つまり上に書いた生徒たちと比べてより厳しい状況下で月に一度、小さな子たちと英会話(という名の遊び)をするだけで、本当に効果があるのでしょうか。

次に、こどもたちにとって、英語が“あたりまえ”でないということについてです。
・こどもたちの生活に英語が必要ない
・こどもたちの周りにいる大人が英語を“あたりまえ”に使用していない
「それなのに、なぜ、ぼくたち/私たちが身につけなきゃいけないの」という彼らのもっともな疑問を解消してあげることが難しいのです。残念ながら。
こどもたちは、大人をよく観察し、見定めています。自分たちのことはさておき、とても厳しい目を持っています。上から英語の必要性を語っても、肝心の大人が英語に疎(うと)ければ、英語への関心どころか、英語を頑張らない理由を与えるだけに終わるのです。

理念は分かります。しかし、中身については“ごまかし”です。与える側の満足で終わらず、長い目で見て成果と呼ぶものが出ると確実に言える、真剣な付き合いをこどもたちとすべきです。
今回のニュースにあるような、小手先の刺激を披露する“やってますアピール”は今後も教育各方面から出てくると思います。その中で、それらが本物かどうか、私たちは見極めなければなりません。こだわり成果への正直さを持っていないところでは、こどもたちは育たないからです。


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●英語遊び 公立保育園でも 「より早く」意識
 毎日新聞 2017年2月1日 15時00分配信を要約

公立保育園や幼稚園で、楽しみながら英語を学ぶ「英語遊び」を取り入れるケースが広がっている。2020年度から実施される次期学習指導要領では、小学校5、6年から英語が正式教科となり、楽しみながら英語を学ぶ現5、6年生の「外国語活動」が3、4年生に前倒しされるほか、同年度に予定されている大学入試改革で、文部科学省は英語について従来の「読む・聞く」の2技能に加え「話す・書く」の4技能で評価する方針。こうした変化を見据え、子どもに向けた英語教育熱は更に熱くなりそうだ。

「タッチ・ユア・アイズ」。軽やかな音楽に合わせて、子どもたちが手を目元に置く。千葉県松戸市の松ケ丘保育所の「英語遊び」の時間。体の部位と衣服をテーマに、英国人講師、モスティン・フィールドさんがイラストを示しながら英単語を繰り返すと、子どもたちがそれに続いた。
英語教育を重視する松戸市は昨年9月、市立17保育所で5歳児を対象に「英語遊び」をスタートさせた。外国人講師が巡回して月に1回、30分教える。
松ケ丘保育所の所長は「子どもたちは月に1度のレッスンを楽しみに待っている。色や数など習った単語が日々の生活で出てくることもある」と話し、子ども政策課の主任主事も「より早く外国人講師と楽しく英語で遊ぶことで異文化の理解や英語学習に取り組む素地作りになると思う」と語る。

徳島県海陽町も12年度に町内の保育園や幼稚園で月1回程度の英語遊びを始めた。町が雇用した日本人講師が巡回して絵本やゲームを通して教えている。
少子化が進む中「より早く英語に触れる機会を作ろう」と提案され、移住者を増やそうと町が作った「移住ガイドブック」でもPRしている。担当課は「子どもたちが家に帰って英語であいさつすることもあるらしい。子どもたちにとって良い機会になっているようだ」と話した。

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