コラム 第1回

ブログ「本の好きなこどもを育てる」でご紹介しました絵本『星どろぼうは、タイトル通り、どろぼうが夜空の星を盗むところからはじまりました。


星を自分の手にとってみたい。
小さいころに、多くの方が思われたことでしょう。
お話が長いぶん、もうすこし面白みがあってほしかったと思うのは、私が大人になってしまったからかもしれません。
星を手にする点も、月での待ち伏せや星が空に戻っていく場面も、こどもたちにとっては、きっと大いに楽しいものであると思います。


こどもたちを教え、その成長の過程を考えるとき、かつて同様にこどもであったはずの自身の姿を、生徒たちに投影することがあります。
ただ、それ自体が意外と難しいことですし、それだけでは子育てもうまくいかないものです。

人間は成長していくにつれて、自分の視点が少しずつ高くなってきていることに、なかなか気づきません。
小さい頃と現在では、同じように眺めようとしても、視点が違ってしまっている。
こどもたちの見ているように何かを見ていたり、私がこどもだった頃の良いことを生徒たちに同じように感じてほしいと思っているつもりでも、それは大人として外から観察し概念として捉えたり振り返ったりしている“こども像”でしかないことが、往々にしてあります。
中学生になって間もないような子たちが「最近の小学生ってさ……」と意識の違いを話題にすることが珍しくないように、時間や立場の変化は、私たちに大きな影響を与えるものなのでしょう。

ですが、子育てには今しかありません。
親や教師として彼らを見守る姿勢とともに、自身がまぎれもなくこどもだったころの姿を、修正や歪曲したりすることなく、一生懸命に探ろうと努力することが大事だと思うのです。

そのための簡単で有効な手段の一つが、絵本の読み聞かせでしょう。
読み聞かせをしていると、なつかしく思い出されること、なるほどと感心すること、身につまされるようなことまで、たくさんあります。
そもそも文学というものは、人間を追求し、描くことを目的としているもの。そのため、すぐれた児童文学には、非常に活き活きとした本当のこどもの姿が描かれています。たとえ古い作品でも、こどもの考え方として、いまの子たちに重なる部分がとても多いものです。

こどもたちのために本を読んであげる。
その体験が、自分のためにもプラスになり、こどもたちに話しかける内容にも良い影響を与えている。
私は、そう思っています。

当ブログとあわせ「本の好きなこどもを育てる」も、どうぞよろしくお願いします。

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